日本の神社は、観光名所であると同時に、今も人々が祈りを捧げる神聖な場所です。京都の伏見稲荷大社、東京の明治神宮、島根の出雲大社——世界中から旅行者が訪れるこれらの神社には、何百年も受け継がれてきた作法があります。
「間違えたらどうしよう」と心配する必要はありません。日本人でも作法をすべて完璧にこなせる人は少ないものです。大切なのは、敬意を持って振る舞うこと。このガイドでは、外国人旅行者が知っておくべき10のエチケットを紹介します。
まず知っておきたいこと:神社とお寺の違い
日本を旅していると「Shrine」と「Temple」の2種類の宗教施設に出会います。混同しやすいですが、まったく異なるものです。
| 神社(Shrine) | お寺(Temple) | |
|---|---|---|
| 宗教 | 神道 | 仏教 |
| 入口の目印 | 鳥居(朱色の門) | 山門(大きな木造の門) |
| 参拝方法 | 二拝二拍手一拝(拍手あり) | 合掌して一礼(拍手なし) |
| 聖職者 | 神主・巫女 | 僧侶・住職 |
| 英語表記 | Shrine / Jinja / Jingu / Taisha | Temple / Ji / Dera / In |
ポイント: 入口に鳥居(朱色のゲート)があれば神社、山門(大きな屋根付きの門)があればお寺です。この記事では主に神社の作法を紹介します。
1. 鳥居(とりい)— 神域への入口

鳥居は「ここから先は神様の領域」を示す境界です。ただの飾りではなく、人間の世界と神の世界を分ける門です。
作法
- 鳥居をくぐる前に軽く一礼する
- 参道の端を歩く(中央は「正中(せいちゅう)」と呼ばれ、神様の通り道とされる)
- 帰るときも鳥居の前で振り返り、一礼してからくぐる
よくある間違い
- 鳥居の中央に立って記念撮影する(神様の通り道を塞いでしまう)
- 一礼せずに素通りする
文化的背景: 鳥居の「鳥」は文字通り「鳥」を意味します。天照大御神が天岩戸に隠れた際、鶏を止まらせる台が起源とする説があります。
2. 手水舎(ちょうずや)— 心身を清める

本殿に向かう前に、手水舎で手と口を清めます。これは単なる手洗いではなく、参拝前の禊(みそぎ)を簡略化した儀式です。
正しい手順
- 右手で柄杓(ひしゃく)を持ち、水をすくう
- 左手に水をかけて清める
- 柄杓を左手に持ち替え、右手に水をかける
- もう一度右手に持ち替え、左の手のひらに水を受け、口をすすぐ(柄杓に直接口をつけない)
- 左手をもう一度清める
- 柄杓を縦にして、残った水で柄を洗い流し、元に戻す
大切なポイント
- 一杯の水ですべて行うのが美しい作法(何度もすくわない)
- 口をすすいだ水は静かに下に吐き出す(飲まない)
- 新型コロナ以降、柄杓を撤去して流水式に変わった場所も多い。その場合は流水で手を清めるだけでOK
3. 参道(さんどう)の歩き方

鳥居をくぐってから本殿までの道を「参道」と呼びます。
- 中央を避けて端を歩く(中央は神様の通り道)
- 急がず、ゆったりと歩く
- 大声での会話は控える
豆知識: 砂利が敷かれている参道が多いのは、歩くたびにジャリジャリと音が鳴り、心身が清められるという意味があります。また、水はけを良くする実用的な目的もあります。
4. お賽銭(おさいせん)— お供えの気持ち

本殿の前にある賽銭箱にお金を入れます。金額に決まりはありませんが、「ご縁がありますように」の語呂合わせで5円玉が好まれます。
作法
- 賽銭箱に静かに入れる(投げつけない)
- 硬貨が一般的。お札の場合は封筒に入れるのが丁寧
- 5円がなくても大丈夫。金額より気持ちが大切
おもしろい語呂合わせ: 5円=「ご縁」、15円=「十分なご縁」、25円=「二重にご縁」。逆に10円は「遠縁(とおえん)」で縁が遠のくとも。もちろん迷信ですが、知っていると楽しいです。
5. 二拝二拍手一拝(にはい にはくしゅ いちはい)— 正式な参拝方法
これが神社参拝のもっとも大切な作法です。**「2回お辞儀、2回拍手、1回お辞儀」**と覚えましょう。
手順
- 姿勢を正し、賽銭箱の前に立つ
- 鈴を鳴らす(鈴緒があれば。神様に「来ました」と知らせる意味)
- お賽銭を入れる
- 深く2回お辞儀する(二拝)— 90度くらいの深いお辞儀
- 胸の前で2回手を打つ(二拍手)— はっきりとした音を出す
- 手を合わせたまま祈る — 心の中で感謝やお願いを伝える
- 深く1回お辞儀する(一拝)
やりがちなミス
- お辞儀が浅い(軽い会釈ではなく、腰から深く)
- 拍手の音が小さすぎる(遠慮せずパンパンと)
- お寺で拍手してしまう(お寺では静かに合掌のみ)
例外: 出雲大社は「二拝四拍手一拝」、伊勢神宮では「八度拝八開手」など、神社によって独自の作法がある場合があります。案内板があれば、それに従いましょう。
6. 御朱印(ごしゅいん)— 参拝の証

御朱印は、参拝した証として神社でいただける手書きの書と朱印です。スタンプラリーとは異なり、一つひとつが神職の方の手で丁寧に書かれる、いわば「生きた芸術作品」です。
いただき方
- 必ず先に参拝する(御朱印だけもらいに行くのはマナー違反)
- 授与所で「御朱印をお願いします」と伝える
- 御朱印帳を開いて渡す
- 初穂料(300〜500円が一般的)を納める
- 書き上がるまで静かに待つ
外国人旅行者へのアドバイス
- 御朱印帳は神社で購入できる(1,500〜2,000円程度)
- 日本語が話せなくても大丈夫。御朱印帳を見せて「Goshuin, please」でも通じることが多い
- 書き置き(あらかじめ紙に書いたもの)を用意している神社もある
- ノートや手帳には書いてもらえない。必ず御朱印帳が必要
デジタルで管理: 「御朱印めぐり」アプリなら、御朱印の写真を記録し、参拝した神社をマップで管理できます。旅の思い出を整理するのにぴったりです。
7. 写真撮影のマナー
神社は美しい写真スポットですが、いくつかのルールがあります。
OK
- 鳥居、参道、外観の撮影(基本的に自由)
- 自撮り棒の使用(ただし混雑時は周囲に配慮を)
NG
- 「撮影禁止」の表示がある場所での撮影
- 本殿の内部の撮影(多くの神社で禁止)
- 神職や巫女を無断で撮影すること
- 祈りを捧げている人にカメラを向けること
- 三脚を使った長時間撮影(通行の妨げになる場合)
見落としがちなポイント
- 「撮影禁止」は日本語のみで書かれていることが多い。「撮影禁止」「撮影ご遠慮ください」という表示を覚えておくと安心
- 迷ったら、周りの日本人参拝者の行動を参考にする
8. 服装とふるまい
神社には厳密なドレスコードはありませんが、神聖な場所にふさわしい振る舞いが求められます。
服装
- カジュアルな服装でOK(Tシャツ、ジーンズなど)
- 避けたほうがよいもの: 露出の多い服、ビーチサンダル、派手すぎる服装
- 山の上の神社を訪れるなら歩きやすい靴を
- 冬場の早朝参拝は想像以上に冷える。防寒対策を忘れずに
ふるまい
- 静かに過ごす(大声での会話、通話、音楽はNG)
- 飲食は境内の指定エリアで(参道沿いに屋台がある場合はそこで)
- ゴミは持ち帰る
- ペットは基本的にNG(一部の神社は許可しているが、リード必須)
9. おみくじとお守り

おみくじ(運勢占い)
引いたおみくじの結果が悪かったら、境内の紐に結んで帰ります。これは悪い運を神社に留めてもらうという意味があります。良い結果なら持ち帰ってOK。
- 料金は100〜300円が一般的
- 英語のおみくじを用意している神社も増えている
- 大吉(だいきち)がもっとも良く、凶(きょう)がもっとも悪い
お守り(護符)
お守りは1年間の効力があるとされ、1年後に神社に返納するのが慣わしです。
- 学業成就、縁結び、交通安全など目的別のお守りがある
- お守りの中身は開けない(神様の力が逃げてしまうとされる)
- 旅行のお土産としても人気
10. 知っておくと安心な実用情報
参拝時間
- 境内は24時間開放の神社が多い
- 授与所(御朱印・お守り)は9:00〜17:00が一般的
- 正月期間は特別に延長されることが多い
トイレ
- 大きな神社には境内にトイレがある
- 小さな神社にはない場合も。最寄り駅で済ませておくのが安心
言葉
- 日本語が話せなくても参拝は問題なし
- 覚えておくと便利なフレーズ:
- 「御朱印をお願いします」(ごしゅいん を おねがいします)— 御朱印をいただきたいとき
- 「お守りをください」(おまもり を ください)— お守りを買いたいとき
- 「写真を撮ってもいいですか?」(しゃしん を とっても いいですか?)— 撮影許可を確認
アクセス
- Google マップで「shrine near me」と検索すれば最寄りの神社が見つかる
- 「御朱印めぐり」アプリなら、御朱印がいただける神社を地図上で探せる
クイックリファレンス:参拝の流れ
迷ったときのための早見表です。
| ステップ | 作法 |
|---|---|
| 1. 鳥居の前 | 軽く一礼してからくぐる |
| 2. 参道 | 端を歩く(中央は神様の道) |
| 3. 手水舎 | 左手→右手→口→左手→柄杓を清める |
| 4. 本殿の前 | 鈴を鳴らす→お賽銭を入れる |
| 5. 参拝 | 二拝→二拍手→祈り→一拝 |
| 6. 御朱印 | 授与所で御朱印帳を渡す |
| 7. 帰り | 鳥居の前で振り返って一礼 |
最後に:完璧でなくても大丈夫
作法を完璧にこなすことよりも、神聖な場所への敬意を忘れないことが何より大切です。もし手順を間違えても、周りの人が優しく教えてくれることもあるでしょう。
日本の神社は何百年、何千年もの間、人々を迎え入れてきました。あなたが旅先で神社を訪れ、静かに手を合わせるその瞬間——それは、日本文化の奥深い一面に触れる特別な体験になるはずです。
画像クレジット: 明治神宮の大鳥居 - Ray in Manila (CC BY 2.0) / 手水舎 - Marek Ślusarczyk (CC BY 3.0) / 明治神宮の参道 - Joe Mabel (CC BY-SA 3.0) / 賽銭箱 - Urashimataro (Public domain) / 御朱印帳 - Immanuelle (CC BY 4.0) / おみくじ - Jim Epler (CC BY 2.0)。画像はすべてWikimedia Commonsより。
免責事項: 神社によって独自の作法やルールがある場合があります。境内の案内板や神職の方の指示に従ってください。