2026年の中秋の名月は9月25日(金)。その夜、滋賀県大津市の石山寺では「秋月祭(しゅうげつさい)」が始まる。
行灯約2,000基に火が入り、境内の石段・多宝塔・硅灰石(けいかいせき)が浮かび上がる。拝観時間は夕方5時30分から夜9時まで。昼間の顔とはまったく別の寺がそこにある。
紫式部がここで月を見た
1004年(寛弘元年)の秋、宮中の女房・紫式部は石山寺に参籠していた。
参籠とは、寺に数日間こもって祈願する修行だ。当時、石山寺は霊験あらたかな観音の聖地として貴族の信仰を集めており、紫式部も女流文学者としてではなく、一人の祈願者として訪れていた。
その夜、本堂から望む琵琶湖に中秋の名月が映っていた。紫式部はその光景を見て、物語の着想を得た——という伝承が石山寺には残っている。源氏物語の冒頭の章、「須磨」の段に描かれる月は、この夜の記憶に重なるとも言われる。
伝承の史実性については諸説ある。しかし石山寺は「紫式部が源氏物語を書き始めた地」として1000年以上にわたって信じられてきた。寺の信仰と文学史が、この場所で一体になっている。
境内の「源氏の間」には紫式部の人形が再現されており、月を見上げる姿で座っている。
石山寺とは
石山寺は747年(天平19年、聖武天皇の勅命)に行基が創建したと伝わる。東寺真言宗の大本山で、西国三十三所観音霊場の第13番札所でもある。
本堂に祀られる本尊は如意輪観世音菩薩(にょいりんかんぜおんぼさつ)。秘仏で、33年に一度の御開帳が行われる。
境内には国宝が2つある。
一つは多宝塔。1194年(建久5年)建立で、日本最古の多宝塔とされる。白壁と朱塗りの組み合わせが、境内の緑の中に映える。
もう一つは本堂。827年に淳和天皇の勅命で拡張され、現在の建物は平安・鎌倉時代の増改築を経て今に至る。
境内に露出する硅灰石は国の天然記念物だ。珪灰石(ウォラストナイト)は石灰岩がマグマの熱で変成した岩石で、石山寺の名前の由来でもある。境内を歩くと、あちこちに白い岩塊が露出している。
近江八景の「石山秋月」
江戸時代、石山寺の月見は「近江八景」に数えられた。
近江八景は、琵琶湖周辺の風景を中国・宋代の文化を参考に選んだ8つの景観。歌川広重は「近江八景」の連作浮世絵を描いており、「石山秋月」はその一つだ。
境内の月見亭は、月を観賞するために設けられた東屋で、広重の浮世絵にも描かれた場所に建つ。秋月祭の夜は、この場所から月と境内の灯りが重なる景色が広がる。
秋月祭の内容
期間: 2026年9月25日(金)・26日(土)
時間: 17:30 〜 21:00(最終入場 20:30)
拝観料: 大人¥1,000 / 子ども¥500(夜間特別拝観料)
行灯約2,000基が境内を照らす。多宝塔広場の特設ステージでは源氏物語関連の演目が行われ、音楽の奉納もある。
9月1日から11月30日は「石山寺と紫式部展(秋)」も開催中。寺宝の展示が行われており、昼間の通常拝観と合わせて立ち寄ることができる。
御朱印
石山寺の御朱印は複数種ある。
基本の御朱印: 本尊・如意輪観音の御朱印。西国三十三所の巡礼御朱印としても授与される。揮毫は「大悲殿(だいひでん)」——観音菩薩を祀る堂の尊称だ。
多宝塔の御朱印: 国宝多宝塔を本尊に見立てた御朱印。
御朱印所は本堂内と寺務所。夜間拝観(秋月祭)中の御朱印対応については、寺に直接確認することを勧める。
西国三十三所の参拝・御朱印については観音菩薩ガイドを参照。寺院での御朱印の受け方は寺院御朱印ガイドにまとめてある。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 秋月祭期間 | 2026年9月25日(金)・26日(土) |
| 夜間拝観時間 | 17:30 〜 21:00(最終入場 20:30) |
| 夜間拝観料 | 大人¥1,000 / 子ども¥500 |
| 通常拝観時間 | 8:00 〜 17:00(年中無休) |
| 通常拝観料 | 大人¥600 / 中高生¥250 / 小学生¥150 |
| 所在地 | 滋賀県大津市石山寺1丁目1-1 |
| アクセス | 京阪石山坂本線「石山寺駅」下車・徒歩10分 |
| 公式サイト | ishiyamadera.or.jp |
秋の参拝タイミング
石山寺は春(桜・ぼたん)と秋(紅葉・月見)の二季に特別な顔を見せる。
秋月祭(9月下旬)の後、11月中旬〜下旬には「あたら夜もみじ」として紅葉のライトアップが行われる。同じ境内を2回訪れて、月夜と紅葉夜の違いを比べることができる。
情報ソース:
画像クレジット: 石山寺本堂(2022年撮影)— Zairon, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
この記事の情報は2026年8月16日時点のものです。拝観料・時間は変更になる場合があります。公式サイトでご確認ください。


