奈良県桜井市にある長谷寺は、「花の御寺(みてら)」と呼ばれる。春は牡丹、夏は紫陽花と蓮、秋は紅葉と萩、冬は寒牡丹と雪。四季を通じて何かしらの花が境内を彩るが、その筆頭が4月下旬〜5月上旬の牡丹だ。
7,000株の牡丹が咲く登廊
長谷寺の参道として有名な「登廊(のぼりろう)」は、仁王門から本堂まで続く399段の木造廊下。両脇に牡丹が植えられており、開花の時期には赤・ピンク・白・黄と様々な色の大輪が廊下を挟むように咲き誇る。
現在栽培されている牡丹は約150種・7,000株。これほど多種・多株の牡丹を一箇所で見られる場所は日本でも珍しい。
牡丹の見頃は例年4月下旬〜5月上旬。2026年は4月22日頃〜5月5日頃が最盛期と見込まれる(気温によって前後する)。ぼたんまつりの期間中は、本堂内陣の特別拝観(有料)も合わせて実施される。
長谷寺という寺の来歴
長谷寺の創建は奈良時代、神亀4年(727年)に遡る。真言宗豊山派の総本山で、本尊は十一面観世音菩薩(高さ約10メートル、木造の仏像としては日本最大級)。
「長谷」という地名は「はせ」と読み、「はさま(峡間)」が転じたものとされる。初瀬川が山間を流れるこの地は古来から神聖な場所とされており、奈良時代以前から信仰の対象だった。
平安時代には「初瀬詣で(はつせもうで)」と呼ばれる参拝が皇族・貴族の間で流行した。源氏物語や枕草子にも長谷寺への言及があり、文学的にも重要な場所だ。紫式部が長谷寺に参籠(さんろう・お寺に泊まり込んで祈ること)した記録も残っている。
牡丹と観音信仰の結びつき
長谷寺に牡丹が多く植えられるようになったのには、観音信仰との関係がある。
牡丹は中国で「花王」「百花の王」と称された花で、仏教の伝来とともに日本に入ってきた。観音菩薩の御利益のうち「現世利益(この世での幸福)」を象徴する花として、観音堂や本堂周辺に植えられることが多い。長谷寺の牡丹も、観音さまへの供花という意味合いが今も生きている。
また、「ぼたん」の漢字「牡丹」の「牡」は「雄」を意味し、タネのつかない株でも美しい花を咲かせることから「雄々しい」ものとして尊ばれた。
御朱印の種類と授与情報
長谷寺では直書きの御朱印を6種類授与している。
主な御朱印:
- 本尊御朱印「大悲殿」: 十一面観世音菩薩への参拝の証
- 西国第八番御朱印: 西国三十三所霊場の第8番札所として
- 御詠歌御朱印: 西国三十三所の御詠歌が記された御朱印
- 春の特別御朱印(牡丹): ぼたんまつり期間中の限定授与
御朱印受付時間:
- 4月〜9月: 8:30〜17:00
- ぼたんまつり期間中は時間延長あり
御朱印所は本堂向かいの授与所で受け付けている。西国三十三所の御朱印を集めている参拝者は、専用の納経帳(集印帳)への記帳も可能。
参拝のポイント
長谷寺は境内が広く、参拝に1〜2時間かかる。ぼたんまつり期間中の混雑対策として:
- 平日の午前中: 週末は駐車場が満車になることも。平日9〜10時台が最も空いている
- 入山料: 大人500円(通常時)。特別拝観が加わる期間は別途拝観料が必要
- 本堂の外舞台: 本堂から張り出した「舞台(清水寺と同様の懸造り)」から牡丹と山の景色を一望できる。晴天の朝が最も美しい
奈良の寺社巡り全体のガイドは奈良の神社・お寺めぐりガイド──大和路の見どころと御朱印にまとめてある。
情報ソース:
画像クレジット: Peony (Paeonia suffruticosa) at Hase-dera, Sakurai, Nara — Hamachidori, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
この記事の情報は2026年4月14日時点のものです。御朱印の頒布状況・拝観時間は公式サイトでご確認ください。


