oono tera
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History
ほう、吾輩に大野寺の由緒を語れと申すか。よかろう、吾輩の記憶の限り、語って聞かせようぞ。 大野寺はな、奈良の宇陀市室生大野に鎮座する、真言宗室生寺派の古刹じゃ。創建の年は、はっきりとした記録は残っておらぬが、寺伝によれば、あの弘法大師空海が室生寺を開いた折、その里坊として建立されたと伝えられておるのじゃ。つまり、平安時代初期にまで遡る、まことに由緒正しき寺であるぞ。 本尊は地蔵菩薩じゃな。古くからこの地の者たちの信仰を集め、多くの願いを聞き届けてきたと聞く。そしてな、この寺の何よりの象徴と言えば、室生川を挟んだ対岸にそびえ立つ、高さ約60メートルもの巨大な磨崖仏であろう。あれは鎌倉時代、興福寺の僧、忍性によって発願され、実に20年もの歳月をかけて彫り上げられたものじゃ。正式には「弥勒磨崖仏」と申すが、皆は「大野寺の磨崖仏」と呼んで親しんでおるのじゃな。 大野寺は、室生寺への参道口に位置しておる故、古くから室生寺とは切っても切れぬ縁があったのじゃ。室生寺は、高野山が女人禁制であったのに対し、女性の参拝を許したことから「女人高野」として知られておるが、大野寺もまた、その信仰圏の一部として、重要な役割を担ってきたのであるぞ。 江戸時代には、徳川幕府の保護を受け、寺領の寄進や堂宇の修復が行われた記録も残されておる。そして明治維新後の、あの廃仏毀釈の嵐の中でも、この地の民の厚い信仰に支えられ、その法灯を守り続けてきたのじゃ。まことに、強き信仰の力であるな。 現在もな、大野寺は室生寺への参拝客や、あの磨崖仏を訪れる観光客で賑わい、その歴史と信仰を今に伝えておる。特に、春には桜、秋には紅葉がまことに美しく、四季折々の景観を楽しむことができる寺として、多くの人々に愛されておるのじゃ。吾輩も、あの桜の時期は、つい足を止めて見入ってしまうものじゃな。