広島県は世界遺産・厳島神社を擁する御朱印聖地でありながら、市街地にも歴史ある名社が点在する。原爆の爆風に立ち続けた山王神社の片足鳥居、安芸国二宮・速谷神社の古格、瀬戸内に浮かぶ因島・大山神社の風光、そして中国山地の霊峰・比婆山に至るまで、広島の御朱印巡りは多彩な表情を持つ。この記事では御朱印がいただける広島の神社15社を厳選し、御朱印の特徴・授与情報・参拝コースを紹介する。
1. 厳島神社(廿日市市宮島町)

ご祭神: 市杵島姫命・田心姫命・湍津姫命(宗像三女神)
推古天皇元年(593年)、佐伯鞍職が神託を受けて創建したと伝わる、安芸国一宮にして日本三景「安芸の宮島」の中心。海に浮かぶ大鳥居(高さ約16m)と朱塗りの回廊・社殿群は1996年にユネスコ世界遺産に登録。潮の満ち引きによって表情を変える神域は、国内のみならず世界中の参拝者を惹きつける。現在の社殿は平安時代末期に平清盛が造営した寝殿造の様式を受け継ぎ、国宝・重要文化財の指定も多数。
- 御朱印の特徴: 「厳島神社」の朱色が映える格調ある墨書き。世界遺産の神社にふさわしい、宗像三女神の威光を感じる一体
- 初穂料: 300円
- アクセス: JR「宮島口駅」からフェリー約10分(JR・松大汽船共に運航)、宮島桟橋から徒歩約15分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 6:30〜17:30(入場料別途) |
| 授与場所 | 朱印所(本社・摂末社各所) |
| 書き置き/直書き | 直書き |
| 限定御朱印 | あり(正月・例大祭など) |
2. 広島護国神社(広島市中区)

ご祭神: 護国の英霊
明治10年(1877年)、西南の役における広島出身戦没者の霊を弔うために創建。現在は明治維新以降の広島県出身戦没者・殉職者約9万2千柱を祀る。広島城の本丸跡(中区基町)に鎮座しており、城跡の石垣と朱塗りの大鳥居の組み合わせが印象的。毎年8月6日の原爆の日には平和記念祭が執り行われ、多くの参拝者が訪れる。
- 御朱印の特徴: 「広島護国神社」の堂々たる墨書きに菊の紋章。城内の護国神社にふさわしい、凛とした一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 広島電鉄「紙屋町東」停留所から徒歩約10分、広島城との共通参拝が便利
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜17:00 |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 直書き |
| 限定御朱印 | あり(月替わり・特別祭事) |
3. 速谷神社(廿日市市)

ご祭神: 武速須佐之男命
創建は崇神天皇の時代(約2,000年前)と伝わる安芸国二宮。明治以前の社格では式内社(名神大社)に列せられた、広島県内最古クラスの神社のひとつ。重要文化財の楼門は江戸時代に広島藩主・浅野光晟が造営したもので、朱塗りの威容が参道に映える。交通安全の神様として知られ、境内には自動車のお祓い所も備わる。
- 御朱印の特徴: 「速谷神社」の伸びやかな墨書きに社紋の印。安芸国二宮の古格と武速須佐之男命の力強さを感じる一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: JR山陽本線「宮内串戸駅」から徒歩約20分、または広電「廿日市」停留所からバス
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜16:30 |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 直書き |
| 限定御朱印 | あり(季節限定) |
4. 山王神社(広島市中区)
ご祭神: 大山咋命・大己貴命・素盞嗚命
被爆地・広島に残る最も印象的な史跡のひとつ。1945年8月6日の原爆爆心地から約900mに位置していたにもかかわらず、境内の二本の鳥居のうち片方は爆風で片方の柱のみが残り「一本柱鳥居(片足鳥居)」として現在も境内に保存されている。焼け焦げながら立ち続けるその姿は、原爆の惨禍と再生の象徴として多くの参拝者を迎える。平和への誓いを込めた参拝地として独特の重みを持つ。
- 御朱印の特徴: 「山王神社」の静かな墨書きに山王の印。片足鳥居の重みを背負う、広島ならではの一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 広島電鉄「中電前」停留所から徒歩約5分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜16:30(要確認) |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 書き置き中心 |
| 限定御朱印 | あり(8月6日特別御朱印) |
5. 多家神社(安芸郡府中町)
ご祭神: 神武天皇・安芸津彦神・速秋津比売神
神武天皇が東征の途次に安芸に行宮を設けたと伝わる地に鎮座する、安芸国三宮。社名の「多家」は「埃宮(えのみや)」とも読まれ、古事記・日本書紀にも登場する有力神社。近世には広島藩主・浅野家の崇敬を受け、現存する本殿・拝殿は江戸中期の造営。府中町という広島市街に隣接する立地のため、市内からのアクセスも良好。
- 御朱印の特徴: 「多家神社」の格調ある墨書き。神武東征ゆかりの古社にふさわしい、歴史の重みを感じる一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: JR山陽本線「天神川駅」から徒歩約20分、またはJR「向洋駅」から徒歩約15分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜17:00 |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 直書き |
| 限定御朱印 | あり(例大祭など) |
6. 胡子大社(広島市中区)
ご祭神: 事代主神(恵比寿神)
広島市中心部・胡町(えびすちょう)の地名の由来となった、広島随一の恵比寿様を祀る神社。創建は1623年(元和9年)で、広島城下の商業地として栄えた胡町の守護神として地域に根付いてきた。毎年11月に開催される「えびす講」(ひろしまえびす)は商売繁盛を祈願する市民の祭として大変賑わい、数十万人が訪れる広島の冬の風物詩。お好み焼き激戦区のすぐそばにあり、食後の参拝にも立ち寄りやすい。
- 御朱印の特徴: 「胡子大社」の商売繁盛らしい活気ある墨書き。えびす様の福相が浮かぶ、広島市街の守護神の一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 広島電鉄「胡町」停留所すぐ
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜17:00 |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 直書き |
| 限定御朱印 | あり(えびす講期間中) |
7. 白神社(広島市中区)
ご祭神: 白砂翁神・白砂姫神
広島城下の鎮守として「白さん」の愛称で市民に親しまれてきた小社。創建年代は不詳だが、毛利輝元が広島城を築いた際に城下の守護神として重視された記録が残る。現在は中区の繁華街のビル群に囲まれた立地ながら、独自の清楚な佇まいを保つ。白砂の神様にちなむ白基調の御朱印帳や、精緻なデザインの御朱印が人気を集める。
- 御朱印の特徴: 白と朱のコントラストが美しいデザイン御朱印。繁華街の中の守護神らしい、凛として清潔感ある一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 広島電鉄「紙屋町西」停留所から徒歩約5分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 10:00〜16:00 |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 書き置き・直書き両対応 |
| 限定御朱印 | あり(月替わり・季節限定) |
8. 住吉神社(広島市中区)
ご祭神: 底筒男命・中筒男命・表筒男命・神功皇后
元安川沿いに鎮座する、廣島総鎮守の格式ある住吉神社。1619年(元和5年)、広島藩初代藩主・浅野長晟が大阪・住吉大社から勧請して創建。水運の守護神として、かつて瀬戸内海交易で栄えた広島の発展を見守ってきた。現在も原爆ドームに近い立地にあり、平和記念公園と合わせて参拝できる。
- 御朱印の特徴: 「住吉神社」の格調ある墨書きに住吉の三つ巴紋。瀬戸内の水運を守った神社にふさわしい、海と清潔感を感じる一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 広島電鉄「中電前」停留所から徒歩約5分、原爆ドームから徒歩約10分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜17:00 |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 直書き |
| 限定御朱印 | あり |
9. 亀山神社(呉市)
ご祭神: 仲哀天皇・神功皇后・応神天皇
呉市の中心部に鎮座する、明治以降の近代日本海軍の町・呉の総鎮守的存在。高台の境内からは呉港や江田島を望む眺望が素晴らしく、「呉の八幡様」として市民に親しまれる。境内には戦艦大和にちなんだ大和ミュージアムへのアクセスも近く、呉観光の拠点として参拝者が多い。海軍ゆかりの奉納品も多数。
- 御朱印の特徴: 「亀山神社」の力強い墨書きに八幡の印。海軍の町・呉の総鎮守にふさわしい、海と力を感じる一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: JR呉線「呉駅」から徒歩約15分、または大和ミュージアムから徒歩約10分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜17:00 |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 直書き |
| 限定御朱印 | あり(海軍記念・例大祭) |
10. 賀茂別雷神社(東広島市)
ご祭神: 賀茂別雷大神
京都・上賀茂神社(賀茂別雷神社)から勧請を受けた神社で、「西条の天神様」とも称される。日本有数の酒処・西条(東広島市)の中心地に鎮座し、清酒醸造の繁栄を見守ってきた。毎年10月に開催される「酒まつり」の時期には酒蔵通りと合わせた参拝者で賑わう。境内は樹齢数百年の楠の大木が印象的。
- 御朱印の特徴: 「賀茂別雷神社」の清雅な墨書きに葵の御紋。西条酒処の守護神らしい、清澄な一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: JR山陽本線「西条駅」から徒歩約10分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜16:30 |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 直書き |
| 限定御朱印 | あり(酒まつり期間中・季節限定) |
11. 艮神社(尾道市)
ご祭神: 素盞嗚命
尾道の千光寺公園にほど近い、樹齢1,000年とも伝わる大楠が境内を覆う神社。創建は806年(大同元年)と伝わり、尾道最古の神社のひとつ。映画「時をかける少女」(大林宣彦監督)のロケ地としても知られ、坂の街・尾道を象徴する景観の中に静かに鎮まる。御神木の大楠は根上がりの奇形をなしており、その生命力に圧倒される。
- 御朱印の特徴: 「艮神社」の素朴な墨書き。大楠の霊気と尾道の坂道文化が宿る、ひそやかな一体
- 初穂料: 300〜500円
- アクセス: JR山陽本線「尾道駅」から徒歩約15分(坂道あり)
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜17:00(要確認) |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 書き置き・直書き両対応 |
| 限定御朱印 | あり |
12. 大山神社(尾道市・因島)
ご祭神: 大山積神・速秋津比賣神
因島(いんのしま)の土生港近くに鎮座する、因島水軍ゆかりの神社。源平合戦の時代から瀬戸内海で活躍した因島村上水軍が信仰した「潮の神」を祀り、海の守護神として代々崇敬されてきた。境内には因島村上水軍の奉納遺品が残り、瀬戸内の海上交通の歴史を今に伝える。因島大橋を望む高台の立地も絶景。
- 御朱印の特徴: 「大山神社」の力強い墨書きに海神の印。瀬戸内の水軍文化が息づく、海と歴史を感じる一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 尾道駅前から因島行きバスで「因島土生港」下車、徒歩約10分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜17:00(要確認) |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 書き置き中心 |
| 限定御朱印 | あり(夏まつり) |
13. 素盞嗚神社(府中市)
ご祭神: 素盞嗚命・稲田姫命
備後の古都・府中市の中心に鎮座する、備後三大神社のひとつ。創建は不詳だが、備後国府の時代から地域の鎮守として重視されてきた。社殿は江戸時代中期の造営で、本殿は三間社流造の美しい形式を保つ。備後絣(びんごがすり)の産地として知られる府中の歴史を守り続ける神社でもある。
- 御朱印の特徴: 「素盞嗚神社」の端正な墨書き。備後の古都・府中の守護神にふさわしい、格調ある一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: JR福塩線「府中駅」から徒歩約15分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜16:30(要確認) |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 書き置き・直書き |
| 限定御朱印 | あり(例大祭など) |
14. 比婆山久米神社(庄原市)
ご祭神: 伊邪那美命(イザナミノミコト)
「イザナミノミコトの陵(みささぎ)」が比婆山山頂にあると古事記に記された伝承地を御神体とする、格別の古社。標高1,264mの比婆山(比婆山連峰の主峰)は国指定史跡「比婆山御陵」として保護されており、神社は麓の庄原市西城町に鎮座する。比婆山への登拝も行われており、山上では巨岩に囲まれた「御陵」の神秘的な雰囲気が体験できる。神話の世界と直接つながる数少ない神社のひとつ。
- 御朱印の特徴: 「比婆山久米神社」の格調ある墨書き。イザナミ陵ゆかりの古社にふさわしい、神話の霊威を感じる稀有な一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 中国自動車道「東城IC」から車で約20分(公共交通機関は非常に不便。車が必須)
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜16:00(要確認) |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 書き置き中心 |
| 限定御朱印 | あり(春の大祭) |
15. 比治山神社(広島市南区)
ご祭神: 彦火火出見命
広島市南区の比治山公園頂上付近に鎮座する神社。古くは安芸の鎮守として崇敬されてきたが、近代には原爆投下の爆心地から約2kmという位置にあり、山が盾となって多数の被爆者が難を逃れた場所でもある。現在は比治山公園(MOCA広島・放射線影響研究所のある緑の丘)の一角に静かに鎮まり、広島の市街地を見下ろす眺望も楽しめる。
- 御朱印の特徴: 「比治山神社」の静かな墨書き。原爆の盾となった丘の神社ならではの、静謐な祈りを感じる一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 広島電鉄「比治山橋」停留所から徒歩約10分(坂道あり)
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜17:00(要確認) |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 書き置き中心 |
| 限定御朱印 | あり |
エリア別・効率的な御朱印巡りコース
広島市内半日コース(3〜4社)
住吉神社 → 山王神社(片足鳥居見学) → 白神社 → 胡子大社
広電で移動可能、歩いて巡れる市中心コース。平和記念公園と組み合わせて参拝するのがおすすめ。
宮島・廿日市1日コース(3社)
速谷神社 → フェリー → 厳島神社(宮島散策含む)
電車・バスでアクセス可能。宮島では厳島神社摂末社(大元神社・荒胡子神社など)の御朱印も集めると充実度アップ。
呉・東広島方面コース(2社)
亀山神社(呉) → 賀茂別雷神社(西条)
大和ミュージアムと酒蔵通りを合わせた観光ルート。
尾道・因島コース(2〜3社)
艮神社 → 大山神社(因島・フェリー or しまなみ海道)
坂道の街・尾道と瀬戸内海の島を組み合わせた1日コース。
御朱印巡りの心得
広島参拝のポイント
- 宮島の混雑: 厳島神社は年間400万人以上が訪れる。繁忙期は御朱印に長時間待ちが生じることも。平日の午前中が比較的空いている
- 離島アクセス: 因島の大山神社へはフェリーまたは車(しまなみ海道)が必要。事前にフェリー時刻を確認すること
- 比婆山久米神社: 庄原市は広島市から車で約1.5〜2時間。公共交通機関でのアクセスは困難。日帰りなら早朝出発が必須
- 季節のおすすめ: 宮島の大鳥居の朝日(春・秋の彼岸頃)は特に美しい。厳島神社は干潮時・満潮時で全く異なる表情を見せる
広島ならではの視点
山王神社の片足鳥居は、単なる観光スポットではなく、御朱印を通じて「生き続けることの意味」を問いかける場所でもある。被爆地・広島の神社を巡ることは、御朱印集めの楽しみと、歴史・平和への祈りが交差する体験になる。
Photo credits: All images are from Wikimedia Commons under Creative Commons licenses.
厳島大鳥居 by Rdsmith4, CC BY-SA 2.5, Wikimedia Commons
広島護国神社鳥居 by DXR, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons
速谷神社楼門 by Saigen Jiro, CC0 1.0 (Public Domain), Wikimedia Commons


