加賀百万石の城下町・金沢は、神社御朱印の宝庫だ。前田利家を祀る尾山神社の異国情緒漂う和洋折衷の神門、金沢最古の社として月替わりカラフル御朱印で人気を誇る石浦神社、兼六園のすぐ脇に佇む金沢神社、ひがし茶屋街の情緒と重なる宇多須神社——同じ城下町でも、それぞれまったく異なる表情を持つ神社が凝縮されている。加えて、石川を代表する大社・白山比咩神社、全国唯一の生姜の神様・波自加彌神社まで足を延ばせば、加賀の神社文化の奥深さが一層鮮明になる。この記事では御朱印がいただける金沢の神社10選を厳選し、御朱印の特徴・授与情報・参拝コースを紹介する。
1. 尾山神社(金沢市尾山町)

ご祭神: 前田利家公・芳春院(まつ)
明治6年(1873年)、加賀藩祖・前田利家と正室まつを祀るために創建された神社。境内正面に立つ「神門(しんもん)」は、和・漢・洋の三様式を一棟に融合させた3階建ての門で、最上階には16色のギヤマン(ステンドグラス)が嵌め込まれている。夜になると彩色された光が境内を照らす幻想的な光景が広がる。この神門は国の重要文化財に指定され、金沢を代表する観光スポットとして知られるが、建築的な奇抜さの奥に、加賀藩を現代まで守り続けてきた藩祖への崇敬が息づいている。
- 御朱印の特徴: 「尾山神社」の力強い墨書きに前田家の家紋・梅鉢紋が印される。加賀百万石の気概を感じる格調ある一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 金沢駅東口から北陸鉄道バス10分「南町・尾山神社」バス停下車すぐ
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜17:00 |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 直書き(混雑時は書き置き) |
| 限定御朱印 | あり(月替わり・例祭) |
2. 石浦神社(金沢市本多町)
ご祭神: 大物主命・大山咋命・菊理媛命・天照大神・天児屋根命・市寸島比売命・応神天皇(七柱合祀)
大宝2年(702年)以前の創建とも伝わる金沢最古の神社。ご祭神は七柱で、縁結び・子宝・開運・学業成就・厄除けと多様な御利益を持つ。近年は「金沢で一番縁結びが得意な神社」として若い世代の間で知名度が急上昇し、毎月デザインが変わるカラフルな月替わり御朱印も全国的な御朱印ファンから注目されている。兼六園の入口(廣坂口)に隣接しており、兼六園と合わせての参拝が定番コース。境内には「まゆみ坂」と呼ばれる段差のない参道があり、ベビーカーや車いすでもアクセスしやすい。
- 御朱印の特徴: 月替わりのデザインが豊富で、季節の花や縁起物をあしらったカラフルな御朱印が特徴。通常の「石浦神社」墨書き版のほか「縁むすび」「子宝」などテーマ別の御朱印も
- 初穂料: 500〜800円
- アクセス: 北陸鉄道バス「兼六園下・金沢21世紀美術館」下車徒歩3分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜17:00 |
| 授与場所 | 授与所 |
| 書き置き/直書き | 月替わりは書き置き中心・通常は直書き |
| 限定御朱印 | あり(毎月デザイン更新) |
3. 金沢神社(金沢市兼六町)

ご祭神: 菅原道真公・前田斉広公・前田斉泰公・金城霊澤神
寛政6年(1794年)、加賀藩11代藩主・前田治脩が藩校「明倫堂」開設に際して学問の神・菅原道真を勧請したのが起源。境内には「金城霊澤(きんじょうれいたく)」と呼ばれる霊泉があり、金の粉が浮かんでいたとの伝承から「金沢」という地名の由来のひとつとされる。学問・芸術の御利益で知られ、受験シーズンには合格祈願の参拝者が絶えない。白山比咩神社・宇多須神社とともに「加賀三社」と称されることもあり、石川県を代表する格式ある神社のひとつ。兼六園と一体の静かな空間が、参拝者に深い落ち着きをもたらす。
- 御朱印の特徴: 「金澤神社」の格調ある墨書きに独特の印章。「金城霊澤」に因む印が入り、金沢の地名発祥の地としての誇りが込められた一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 北陸鉄道バス「兼六園下・金沢21世紀美術館」下車徒歩5分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜17:00 |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 直書き |
| 限定御朱印 | あり(季節限定・合格祈願シーズン) |
4. 宇多須神社(金沢市東山)
ご祭神: 加賀国の国魂神・宇多須大神など(諸説あり)
金沢東部の浅野川沿いに広がる「ひがし茶屋街」から徒歩圏内に鎮座する古社。茶屋街の石畳を抜けた先、木々に囲まれた境内で参拝するひとときは、江戸から明治にかけての花街文化が色濃く残る金沢の空気そのものだ。古くから金沢の旧市街を守護してきた社として、地元住民の厚い崇敬を受けている。ひがし茶屋街・主計町茶屋街の散策と合わせた参拝が定番で、特に朝の静かな時間帯に訪れると、茶屋街の喧騒が始まる前の境内の趣を楽しめる。
- 御朱印の特徴: 「宇多須神社」の丁寧な墨書き。茶屋文化の薫る金沢東部の古社にふさわしい、品格ある一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 北陸鉄道バス「橋場町(ひがし・主計町茶屋街)」下車徒歩5分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜17:00(要確認) |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 書き置き中心 |
| 限定御朱印 | あり(例大祭) |
5. 椿原天満宮(金沢市天神町)
ご祭神: 菅原道真公
天文15年(1546年)、加賀藩の礎を築いた前田利家の父・前田利春が創建したと伝わる天満宮。金沢城の北西に位置する椿山(つばきやま)の丘上に鎮座し、参道の急な石段と周囲の老木が深い森の聖域を形成している。前田家からの崇敬が篤く、藩政期には歴代藩主が学問の神への祈願を欠かさなかったという。受験シーズンには合格絵馬が境内を彩り、金沢・北陸一帯の受験生が祈願に訪れる。金沢城公園からほど近く、歴史散策との組み合わせで参拝しやすい立地にある。
- 御朱印の特徴: 「椿原天満宮」の端正な墨書き。前田家と学問の神のつながりを感じる、格調ある一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 北陸鉄道バス「武蔵ヶ辻・近江町市場」下車徒歩15分、または金沢城公園から徒歩10分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜16:30 |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 直書き |
| 限定御朱印 | あり(受験シーズン・梅まつり) |
6. 安江八幡宮(金沢市此花町)
ご祭神: 応神天皇・神功皇后・比咩大神
金沢市北部、かつての安江宿に鎮座する八幡宮。加賀藩政期から金沢の総鎮守的な役割を担い、「安江の八幡さん」として地元商人や職人に親しまれてきた。近江町市場の近くに位置しており、市場での買い物の前後に立ち寄る参拝者も多い。境内は落ち着いた雰囲気で、八幡大神の武運・縁結びの御利益を求める参拝が絶えない。特産品の加賀絹の守護神としての側面も持ち、繊維産業の関係者からの奉納品も見られる。
- 御朱印の特徴: 「安江八幡宮」の重厚な墨書きに八幡の印。加賀の商いと武運を守り続けてきた神社にふさわしい、格のある一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 北陸鉄道バス「武蔵ヶ辻・近江町市場」下車徒歩5分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜16:30(要確認) |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 書き置き・直書き両対応 |
| 限定御朱印 | あり(例大祭) |
7. 多賀神社(金沢市野町)
ご祭神: 伊弉諾尊・伊弉冉尊
寛永16年(1639年)、加賀藩3代藩主・前田利常が滋賀の多賀大社から勧請した長寿・縁結びの神社。「お多賀さん」の愛称で親しまれ、長寿の神・伊弉諾尊と伊弉冉尊の夫婦神への信仰が根付いている。しゃもじを奉納する「長寿のしゃもじ」の習慣があり、長寿祈願の参拝者が全国から集まる。加賀藩の後ろ盾を持つ格式ある神社として、金沢の信仰文化を語る上で欠かせない存在だ。
- 御朱印の特徴: 「多賀神社」の丁寧な墨書きに長寿を象徴するしゃもじの印。「お多賀さん」らしい、温かみと格式を兼ねた一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 北陸鉄道バス「野町広小路」下車徒歩10分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜16:30(要確認) |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 書き置き中心 |
| 限定御朱印 | あり(長寿の日・例大祭) |
8. 日吉神社(金沢市上近江町)
ご祭神: 大山咋命・大己貴命
滋賀の日吉大社を総本社とする「山王信仰」の社。大山咋命を祀る日吉神社は、比叡山延暦寺の守護神として全国に展開した神社群のひとつで、猿を神使とする独特の信仰体系を持つ。加賀藩ゆかりの寺院・城下町の精神的な基盤として、古くから金沢の人々に崇敬されてきた。境内はこじんまりとしているが、山王の聖域としての静謐な空気を保っており、市街地の中の静かな参拝スポットとして地元に愛されている。
- 御朱印の特徴: 「日吉神社」の落ち着いた墨書きに山王の印。山王信仰の歴史と比叡山の霊験を感じる一体
- 初穂料: 300〜500円
- アクセス: 北陸鉄道バス「武蔵ヶ辻・近江町市場」下車徒歩10分
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜16:00(要確認) |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 書き置き |
| 限定御朱印 | あり(例大祭) |
9. 波自加彌神社(金沢市堀川新町)
ご祭神: 波自加彌命(はじかみのみこと)
延喜式神名帳(927年)に記録される式内社で、「生姜(はじかみ)の神様」を祀る全国唯一の神社。「はじかみ」とは古語で生姜や山椒の総称であり、食の神・薬の神として加賀の食文化を長年守ってきた。毎年9月には境内で「はじかみ大祭(生姜まつり)」が行われ、全国から生姜・食品関係の関係者が参拝する。御朱印には生姜をモチーフにした印が施され、全国唯一の神社ならではの個性的な御朱印として御朱印コレクターの間で人気が高い。金沢駅から徒歩圏内という立地も魅力。
- 御朱印の特徴: 「波自加彌神社」の素朴な墨書きに生姜をモチーフにした印。全国唯一の生姜神社らしいユニークな一体で、コレクションに唯一性を添える
- 初穂料: 500円
- アクセス: 金沢駅東口から徒歩15分、または北陸鉄道バス「堀川新町」下車すぐ
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 9:00〜16:30(要確認) |
| 授与場所 | 社務所 |
| 書き置き/直書き | 書き置き中心 |
| 限定御朱印 | あり(はじかみ大祭・9月限定) |
10. 白山比咩神社(石川県白山市三宮町)
ご祭神: 白山比咩大神(菊理媛神)・伊弉諾尊・伊弉冉尊
全国2,700社以上の白山神社の総本社。霊峰・白山(標高2,702m)を御神体として崇める「白山信仰」の総本宮であり、石川・岐阜・福井の三県にまたがる信仰圏を持つ。創建は崇神天皇の御代(西暦300年頃)と伝わり、白山登拝の拠点として奈良・平安期から修験者・山伏が全国から集まった。主祭神の菊理媛神は縁結び・縁切り・安産・子授けの御利益で知られ、日本書紀にも登場する古い神だ。金沢市内ではなく白山市(旧鶴来町)に鎮座するが、石川の御朱印巡りで外せない最重要社として、金沢からの日帰り参拝者が絶えない。
- 御朱印の特徴: 「白山比咩神社」の堂々たる墨書きに白山の御神印。全国白山神社の総本社にふさわしい、格調と霊験を兼ね備えた一体
- 初穂料: 500円
- アクセス: 北陸鉄道石川線「鶴来駅」から徒歩15分、または金沢駅から北陸鉄道バス(約50分)
授与情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 授与時間 | 8:30〜17:00 |
| 授与場所 | 授与所 |
| 書き置き/直書き | 直書き |
| 限定御朱印 | あり(白山山開き・例大祭・月替わり) |
エリア別・効率的な御朱印巡りコース
城下町中心コース半日(3〜4社)
尾山神社 → 椿原天満宮 → 安江八幡宮 → (余力があれば)波自加彌神社
金沢城・尾山神社から北へ歩く加賀歴史コース。前田家ゆかりの神社を中心に、城下町の空気を感じながら参拝できる。
兼六園・本多町コース(2〜3社)
石浦神社 → 金沢神社 → (徒歩15分)宇多須神社
兼六園入口を起点に、兼六園を縦断して東山方面へ向かうコース。金沢の”庭と神社と茶屋街”を一度に楽しめる定番ルート。
ひがし茶屋街コース(1社)
宇多須神社
茶屋街散策の早朝スタートに最適。開店前の石畳と神社の静寂が、金沢ならではの時間を作る。
近郊延長コース(白山方面)
白山比咩神社
金沢から北陸鉄道石川線で約50分。白山の霊気に触れる日帰り参拝。石川の御朱印巡りを締めくくる総本社参拝として最適。
御朱印巡りの心得
金沢参拝のポイント
- 尾山神社は観光ピーク時に行列: 桜・紅葉シーズンと連休は神門前に観光客が集中する。授与所も混雑するため、開門直後(9時)が狙い目
- 石浦神社の月替わり御朱印は早期終了あり: 数量限定のデザインは月初に受け取れなくなることも。月初の早い段階で参拝するか、公式SNSで在庫情報を確認してから訪れること
- 金沢神社は兼六園セットで: 兼六園入場後に脇の小路から金沢神社へアクセスできる(無料区域)。観光と参拝を効率よく組み合わせられる
- 白山比咩神社へのバスは1〜2時間に1本: 時刻表を事前に確認し、帰りのバスに余裕を持たせること。参拝・御朱印受け取りで最低30〜60分は見込む
金沢ならではの視点
加賀百万石の藩政期、前田家は神社への庇護を文化政策のひとつとして積極的に行った。尾山神社・金沢神社・椿原天満宮・多賀神社はいずれも前田家との直接的な関わりを持ち、御朱印を受けながらその背景を辿ることは、単なる参拝以上の文化体験になる。また、石浦神社のカラフルな御朱印は「金沢らしい工芸感覚」の現代版ともいえ、伝統と新しさが共存する金沢の気質を御朱印文化の中にも見ることができる。
Photo credits: All images are from Wikimedia Commons under Creative Commons licenses.
尾山神社神門 by そらみみ, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons
金沢神社鳥居 by Daderot, CC0 Public Domain, Wikimedia Commons


